ホッキョクグマはシロクマとしても知られ、動物園や漫画のキャラクターとしても人気があります。では、野生のホッキョクグマはどこに分布し、どのような暮らしをしているのでしょうか。
ホッキョクグマの危機 ホッキョクグマの生息地はどこ?
北アメリカ大陸北部、ユーラシア大陸北部、北極圏に分布しています。
個体数は26000頭でその約60%がカナダに生息しています。
極点周辺は厚い氷に覆われ、餌となるアザラシが捕れないので、生息は少ないと考えられています。
北極の海に浮かぶ「海氷」がホッキョクグマの生活の場で、海氷に適応し、進化してきました。
海氷はホッキョクグマの休息、移動、繁殖、狩りを行う生活の基盤です。
ホッキョクグマの中には海氷上で生まれ、一度も陸に上がることなく海氷上で生涯を終えるものもいます。
ホッキョクグマの写真と言えば、星野道夫さんを思い出します。
彼の写真は極北の一瞬をとらえた素晴らしいもので、筆者も絵葉書のセットを持っています。
星野道夫さんは1996年にテントで就寝中ヒグマに襲われて46歳の若さで亡くなりました。
「どうぶつ奇想天外」というテレビ番組の取材中の事故で、この番組を毎回見ていた筆者は大変ショックを受けました。
ホッキョクグマの危機 寿命はどのくらい?
野生のホッキョクグマの寿命は25~30年動物園のホッキョクグマの寿命は約25年です。
ホッキョクグマは春先に交尾し、11月~12月に出産します。
メスは秋から内陸部に移動し、雪の中に巣穴を掘って何も食べずに出産に備えます。
生まれたときの子グマは体重500~600g程度で親の大きさに比べて極端に小さいです。
出産後母グマは絶食状態で子に乳を与え、初春に巣穴から出て、海を目指します。
母グマの絶食期間は最長でなんと8カ月にもなります。
8カ月も絶食しながら授乳子育てなんて、人間にはまねできませんね。
巣穴から出る頃の子グマの体重は生まれたときの約20倍の10kg以上になっています。
母グマが子育てにかける期間は約2年半と言われます。
この間に母グマが新たに妊娠することはないため、一度子どもを産んだメスのホッキョクグマは次に妊娠するまで最低でも3年ほど期間が空くことになります。
また、生まれた子グマが繁殖可能になるまでには5~6年は必要です。
もし何らかの原因でホッキョクグマの数が激減するようなことが起きれば、回復には長い期間を要するおそれがあります。
ホッキョクグマの危機 体のつくりは超寒冷地仕様!
ホッキョクグマの体はクマの仲間で最大級で、大人のオスで体重約800kg、体長約2.5mになることもあります。
ホッキョクグマは季節によって餌環境が大きく変わるため、体重も合わせて変動し、餌が獲れない時期のオスは約300kgになります。
クマの仲間は熱帯に住むマレーグマ、温帯に住むツキノワグマ、亜寒帯に住むヒグマ、寒帯にすむホッキョクグマの順に体が大きくなっています。
これはベルクマンの法則といい、体が大きくなると体重当たりの体表面積が小さくなり、寒冷地で体温を維持するのに役立ちます。
大きな体に大量の脂肪を蓄えています。
脂肪はエネルギー源でもあり、寒さから身を守る鎧にもなっています。
体の大きさとは逆に耳がほかのクマ類に比べて小さく、これも寒冷地で体温を奪われないために適応した結果だと考えられています。
体の大きさに比べて頭は流線型で小さく、首や手足が長い等、泳ぐのに適した体形をしていて、前脚をオールの役割、後脚は舵の役割を持っています。
北極圏の海を悠々と泳ぐホッキョクグマ、泳ぎが得意なのはこの体形のおかげなんですね。
ホッキョクグマの危機 毛の色は白ではない⁈
ホッキョクグマはシロクマとも呼ばれますが、毛の色は白ではありません。
ホッキョクグマの毛の色は透明で、毛はストローのように中が空洞になっています。
中が空洞の毛は保温と水中での浮力の役割を持っています。
長さ最大5cmのきめ細かく密な下毛と15cmに達する長く荒い保護毛が光の屈折によりクリーム色がかった白に見えます。
毛の下の皮膚は黒色で、熱を吸収する役割を持っています。
何とも徹底した寒冷地仕様の体ですね。
ホッキョクグマの危機 ホッキョクグマは絶滅危惧種⁈地球温暖化との関係は?
ホッキョクグマは地球温暖化による気温上昇と環境汚染によって様々な影響を受けています。
ホッキョクグマの餌であるアザラシを狩るためには適度な厚みの海氷の存在が欠かせません。
地球温暖化によって、この適度な厚みの海氷が少なくなっています。
ホッキョクグマは冬から春にかけて大量のアザラシを食べて栄養を蓄えて、氷が溶ける初夏から晩秋までの時期は絶食に近い状態で過ごすこととなります。
ところが近年、海に氷が張る時期が短くなっていて、十分に栄養を蓄えることができる期間が短くなり、繁殖率への影響が出ています。
ホッキョクグマは一時、狩猟などにより絶滅が心配されましたが、国際的な保護活動によって、危機を脱しました。
しかし現在は新たに、地球温暖化や北極圏の環境悪化などの影響を受け、ホッキョクグマはレッドリストの「危急種」に指定されています。
ホッキョクグマの危機についてまとめ
ホッキョクグマは超寒冷地に適応したクマの仲間です。
海氷がなければ生存や繁殖が難しく、地球温暖化によって海氷が減るとホッキョクグマの個体数はさらに減少するでしょう。
筆者は日本各地の動物園でホッキョクグマを観察してきましたが、ホッキョクグマがもはや動物園にしかいないという世の中にはなってほしくありません。
一人一人ができることは小さくても、環境に負荷をかけない生活を心掛けていこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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