皆さんは「エゾナキウサギ」を知っていますか?
日本では北海道の高山にしかいない動物なので、名前を聞いたこともない人も多いかもしれませんね。
ウサギと呼ぶには耳は丸くて小さく、顔もネズミっぽいのですが、北海道の野生動物の中では登山者の憧れの動物です。
私も一度会いたいと思って、この夏大雪山緑岳に登りましたが、声は聞いたものの姿を見ることはできませんでした。
エゾナキウサギの生息地は?
ナキウサギは、その名の通りウサギの仲間です。高い声で鳴くことからナキウサギと呼ばれます。
ナキウサギの仲間は北アメリカに2種、他はすべてアジア大陸にいます。特にヒマラヤ山脈近くに多くいます。
キタナキウサギはウラル、シベリア、モンゴル、中国、朝鮮、カムチャツカ半島、サハリンに広く分布しており、エゾナキウサギはキタナキウサギの1亜種で、北海道だけに生息する固有種です。
エゾナキウサギは今から1万年前以上前の氷河期、シベリア大陸と北海道が陸続きだったころに北海道に渡ってきたと考えられています。
氷河期の後、氷が溶けて海水面が上昇し、北海道はシベリア大陸から離れて島になりました。そしてエゾナキウサギの祖先は涼しい山岳地帯に生き残り「生きた化石」になりました。
エゾナキウサギの分布は北海道の中央部に限られていて、北見山地、大雪山系、日高山脈、夕張山地の標高1500mから1900mに多くいます。
エゾナキウサギが棲んでいる場所は「露岩帯」とか「ガレ場」といわれる大小の岩が積み重なったところです。
ガレ場は夏は涼しく、風雨を避けることができ、冬は雪をよけて暖かいので、エゾナキウサギの恰好の住処です。また、天敵のエゾオコジョやキタキツネから逃げるのにも最適なのです。
エゾナキウサギのかわいい姿や鳴き声を紹介します!からだの特徴
エゾナキウサギのからだの特徴について紹介します。
体長15~18cmで、体重は120~160g、子供のエゾナキウサギはピンポン玉くらいの大きさです。
耳は丸くて短いです。これは岩の隙間を自由に動き回れるように進化したものだと考えられます。
大人のエゾナキウサギの耳の縁は岩でこすれてギザギザになっていますが、若いエゾナキウサギの耳の縁はきれいです。
尾は短くて毛に隠れて見えませんし、足も短くて飛び跳ねるというよりも、すばしっこく動き回る感じです。
最初にエゾナキウサギが発見されたときはネズミの仲間だと考えられていましたが、調査の結果、ウサギの仲間であることが分かりました。
上あごの前歯(門歯)の裏側にも歯がついていて歯が二重になっているのが、ネズミではなくウサギの仲間である証拠です。
エゾナキウサギのかわいい姿や鳴き声を紹介します!鳴き声の特徴
エゾナキウサギは名前の通り、甲高い鳴き声でよく鳴きますが、オスとメスとでは鳴き声が違います。
オスは「キィッ」または「キチィ」という鳴き声を3月から10月にかけての時期は1度に4 ~16回出し、それ以外の時期は1回だけ出すことが多いです。
メスは「ピュー」「ピィーッ」などの伸びのある発声と、「ピィツィ」「ピキィ」などの短い発声をします。
鳥のさえずりにとても似ている高い音なので、慣れた人でないと聞き分けは難しいと思います。
私は緑岳に登っているときに、一緒に登った地元の方から「ほら!今のがエゾナキウサギの声」といわれても、鳥のさえずりと区別できませんでした。
何しろ高山のガレ場ですので、怖くて怖くて転ばないようにほとんど四つん這いで下山していた最中でしたから、私にはエゾナキウサギの姿を探す余裕はありませんでした。
私のすぐ後ろを歩いていた人はエゾナキウサギの後姿を一瞬見たそうです。ああ、うらやましい!
エゾナキウサギのかわいい姿や鳴き声を紹介します!エゾナキウサギの暮らし
エゾナキウサギは氷河期に陸続きだったシベリア大陸から北海道にやってきた動物なので、寒さには強く、冬眠はしません。
秋になると、越冬用の食料として、大量の葉や茎、実を岩の間の巣に運びます。岩穴で乾かして干し草などの保存食を作って冬に備えます。
寒さには強いですが暑さは弱く、夏の暑い日には岩穴の中で涼んでいて、ほとんど外に出てきません。
また、風がなくてほどよく暖かいときに、岩の上にじっとして日光浴をします。日光浴中にノスリなどの猛禽類に襲われて食べられてしまうことも多いようです。
すばしっこいのかのんびり屋さんなのか分かりませんね。
エゾナキウサギは「植物なら何でも食べる」といわれるほどいろいろな種類の植物を食べます。
好きな食べ物はコケモモ、ヒメスゲ、エゾムラサキツツジ、シラネニンジン、イソツツジ、ヒメノガリヤスなどの葉や茎です。イワブクロやチングルマなどの高山植物の花も大好きです。コケもよく食べます。
エゾナキウサギの生息地は?かわいい姿や鳴き声を紹介します!まとめ
エゾナキウサギは北海道の高山にしか生息しない「生きた化石」のウサギの仲間です。
近年、その数や生息地は減少し、エゾナキウサギは準絶滅危惧種に指定されています。
エゾナキウサギが去った場所にはエゾシカが生息しているそうです。
また、エゾナキウサギは暑さに弱いので、地球温暖化の影響で気温が上がれば生息できる場所はますます狭くなってしまいます。
この小さな動物が将来も暮らしていけるように大切に守っていかなくてはいけないと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
かわいい哺乳類についてはこちらの記事もお読みください。
コメント