この写真の蝶を知っていますか?アゲハ蝶のようで色が違う。
この蝶は「アサギマダラ」です。渡りをする蝶として知られています。
渡り鳥はよく知られていますが、渡り蝶⁈しかもその距離は2000キロ超!
なぜアサギマダラは長距離の渡りをするのでしょうか。
アサギマダラ 渡りをする蝶 アサギマダラとは?
アサギマダラは、タテハチョウ科の蝶で、アゲハ蝶くらいの大きさの綺麗なチョウです。
アサギマダラの「アサギ(浅葱)」は青緑色の古い呼び名で、翅の薄水色に由来しています
確か新撰組の制服の色が浅葱色でしたね。とてもきれいな色で私は大好きです。
アサギマダラに興味を持ってから浅葱色がますます好きになりました。
アサギマダラを有名にしたのはその渡りのすごさです。
私がアサギマダラを知ったのは生物の研修会で話題になったからです。その時は「へえ、渡りをする蝶が日本にいるんだ。」程度にしか思いませんでした。
しかし、実際にアサギマダラが群れ飛んでいるところを見たときには大変感動し、この蝶に興味を持つようになりました。
私は北九州市にある皿倉山のビジターセンターで、たくさんのアサギマダラが飛んでいるところを見ました。
ひらひらと飛ぶ蝶たちがどこから飛んできたのだろう、これからどこまで旅をするのだろうと、想像するのはとても感慨深いものです。
皿倉山のビジターセンター周辺にはアサギマダラが休憩できるように成虫が蜜を吸うフジバカマという植物が植えてあります。
また、皿倉山のガガイモの葉の裏にアサギマダラの卵も確認されています。北九州市では渡りの中継地だけでなく、繁殖もしているようです。
今日(9月30日)この話を聞いて、皿倉山生まれのアサギマダラにもうすぐ会えると思うと、私はとてもワクワクした気持ちになります!
このような取り組みをしている場所があなたの近所にもあるかもしれませんね。
アサギマダラは春から夏にかけては本州などの標高1000メートルから2000メートルほどの涼しい高原地帯で繁殖します。
秋には気温の低下と共に暖かい南へ移動を開始し、九州や沖縄、八重山諸島や台湾まで海を越えて飛んでいきます。
冬の間は、暖かい南の島の洞穴で過ごし、新たな世代の蝶が春から初夏にかけて北上し、本州などの高原地帯に戻ります。
季節により渡りをする日本で唯一の蝶がアサギマダラなのです。
アサギマダラの渡りのルートは?時期は?
アサギマダラの飛行距離は最高2500キロメートルにも及びます。
日本列島を縦断しておつりがくる距離ですね。世界第2位の移動距離です。
あの小さな体のどこにそのような力が秘められているのでしょう。
アサギマダラの飛行ルートは日本各地の蝶愛好家や台湾そして香港の人々の協力によって徐々に明らかになってきています。
移動ルートにはいくつかのパターンがあり、春から初夏にかけて北上するルートと秋に南下するルートは異なります。
黒潮の上昇気流や上空の季節風を利用してエネルギーを節約しながら長距離移動をしているようです。
時には海に落ちてしまうこともあるようですが、そこから再び飛び立つ目撃情報もあります。なんてたくましい蝶でしょうか。
大分県の姫島や鹿児島県の喜界島がアサギマダラの中継地としては有名です。
アサギマダラは快適な気温を求めて長距離を移動しているようです。
成虫が観察される北限が東北から北海道へと徐々に北上しているのは地球温暖化と関係しているのでしょう。
アサギマダラの寿命と渡りの関係は?
アサギマダラの寿命は羽化後4~5カ月で、チョウの仲間では長いほうです。
その寿命の中でおよそ2000キロを移動するのですが、この間に産卵して命を次世代につなぎます。
卵はキジョランなどガガイモ科の葉の裏にポツンと1個から3個ほど産みつけられます。
アサギマダラの幼虫の食草であるキジョランなどのガガイモ科の植物は地下茎で伸びるつる植物で、道端でよくみられる植物です。
いずれもアルカロイド系の毒をもっていて、アサギマダラの幼虫は成長しながらこの毒を体に貯めていきます。
確かにアサギマダラの幼虫は成虫と違って見るからに毒々しい色をしています。
だから、アサギマダラは長い旅をしても鳥や他の昆虫に食べられずに旅ができるわけですね。
9月中旬までに生まれた卵は、11月上旬までに羽化して南下の旅に加わります。
そのあとに産卵されたアサギマダラは、幼虫のままキジョランの葉の裏で冬を越してからさなぎになります。
春から初夏に北上するアサギマダラと秋に南下するアサギマダラは世代が異なります。
世代を超えて「渡り」が伝えられる仕組みも不思議ですね。
アサギマダラ 渡りをする蝶 全国マーキング調査
マーキング調査とはアサギマダラの移動状況調査のために、捕獲したアサギマダラの翅にマーキングをして、再捕獲情報を共有する取り組みです。
再捕獲情報から移動ルートや時期、移動距離などを調べることができます。
マーキング調査は1980年代に鹿児島県から始まりましたが、インターネット環境の普及に伴って、調査の輪は急速に広がっています。
マーキングは捕獲したアサギマダラの翅にダメージを与えないように注意しながら油性ペンで捕獲した日付・場所を記入します。
今では書籍などが発行され、NHKの「ダーウィンが来た!」でも取り上げられました。
このマーキング調査は特別な資格がなくてもできるので、さまざまな団体や動物園などがマーキング調査の企画や協力の呼びかけを行っています。
あなたの近くでもアサギマダラのマーキング調査をやっているかも知れませんね。
アサギマダラの成虫はフジバカマやヒヨドリソウの蜜を吸います。特にオスはこの蜜からメスを引き付けるためのフェロモンを作ります。
フジバカマは秋の七草のひとつで、キク科ヒヨドリバナ属の多年生植物です。
川岸の護岸工事などによって生息場所が少なくなり、野生のフジバカマは準絶滅危惧種に指定されています。
アサギマダラの中継地を増やすために、学校や自然公園にフジバカマを育てている場所も多くなりました。
先日ふとNHKの番組を見たときに、宮崎県日南市南郷町の東2.5キロメートル沖合にある「大島」が蝶の楽園として紹介されていました。無人島になった大島にフジバカマを植えたところ、アサギマダラを始め、約55種類の蝶が生息する島になったということでした。
みなさんも自分の放したアサギマダラが遠い地で誰かに見つけてもらう日が来るのを期待しながら、マーキング調査に参加してみませんか?
アサギマダラの渡りに関わることで、生命の尊さや自分の自然との関わりに新しい何かを得ることができるかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
渡りをする動物については次の記事もお読みください。
コメント
初めまして
わんちゃんこと、中村美津枝と申します。
blog【わんちゃんの独り言】http://blog.goo.ne.jp/mn1944
10/26アップのアサギマダラとフジバカマの項にリンクをお願いしたく、メールさせていただきました。よろしくお願いします。
初めまして、「わんちゃんの独り」」読ませていただきました。季節の植物や暮らしをまとめた素敵なブログですね。私は今アドセンス審査合格を目指しており、他のサイトとのリンクは合格してからと考えています。しばらく待って頂いてよろしいでしょうか?
読んでいただいて光栄です。
リンクの件、良いお返事、お待ちしてます。